レンズ資産という考え方。マウント変更で失うもの・残せるもの Posted on 2026年10月14日 By tropiooo 「マウントを変えたら、これまで買い集めたレンズは全部ムダになるのでは」。新しいボディのカタログを眺めながら、防湿庫のレンズを見てそう考え込んだことが、私にもあります。 こんにちは、「カメラとレンズの防湿庫だより」管理人の光森です。数年前に一眼レフからミラーレスへ移り、そのときは純正のマウントアダプターで一眼レフ用のレンズを持ち越しました。 カメラ好きの間では昔から「ボディは消耗品、レンズは資産」と言われます。ところが実際にマウントを変えてみると、その資産には目減りする部分と、ほとんど減らずに残る部分がありました。 この記事では、同じメーカー内の乗り換えとメーカーをまたぐ乗り換えで、何をどこまで持ち越せるのかを、メーカー公式の対応表とCIPAの統計をもとに整理します。移行のタイミングと棚卸しの手順は一眼レフからミラーレスへ。移行のベストタイミングと機材整理術に書いたので、ここでは「何が残り、何が減るのか」に絞ります。 目次1 「ボディは消耗品、レンズは資産」と言われる理由2 同じメーカー内の乗り換えなら、純正アダプターで大半を持ち越せる3 メーカーをまたぐと、レンズは「売って組み替える資産」になる4 レンズ以外の機材は「規格」で残るかどうかが決まる5 旧マウントの機材は、新品が消えると値段の付き方が変わる6 まとめ 「ボディは消耗品、レンズは資産」と言われる理由 ボディはシャッターのような可動部が使うほどすり減るうえ、センサーや処理エンジンが数年ごとに世代交代するので、新しい機種が出るたびに見劣りしていきます。一方のレンズは光学設計の寿命が長く、手入れさえしていれば何十年も現役で使えます。私の防湿庫の上段にあるM42のタクマーは半世紀ほど前のレンズですが、アダプターを介せば今のミラーレスでもきちんと写ります。 売買記録を見返しても、ボディは後継機が発表されたところで相場が一段下がることが多く、レンズは後継が出るまで値崩れしにくいものが目立ちました。格言のとおり、ボディは使い切るもの、レンズは持ち続けるものという差は、記録の上でもはっきりしています。 ただし、この格言には前提が1つ隠れています。レンズが資産でいられるのは、そのレンズを付けられるボディが手元にあるか、市場に買い手がいる間だけです。レンズの値打ちはガラスそのものより、「マウント」という土台の上に乗っています。だから私は、レンズ資産をレンズ単体ではなく、マウントごとの資産として数えるようにしています。 同じメーカー内の乗り換えなら、純正アダプターで大半を持ち越せる 同じメーカーの中で一眼レフからミラーレスへ移るなら、レンズ資産の多くは純正のマウントアダプターで持ち越せます。主なパターンを、2026年10月時点のメーカー公式情報をもとに表にまとめました。 乗り換えのパターン持ち越す手段使えるレンズ注意点キヤノン EF → RFマウントアダプター EF-EOS REF・EF-SレンズEF-Sは約1.6倍のクロップになるキヤノン EF-M → RF純正の手段なし使えない同じメーカーでも持ち越せないニコン F → Zマウントアダプター FTZ IIAI以降のFレンズAFはモーター内蔵レンズだけ共通規格の中で移るアダプター不要そのまま使える規格の外には出られないほかのメーカーへ移る純正の手段なし基本的に使えない他社製アダプターはメーカーの対応表の外 キヤノンのEOS R5 Mark IIの取扱説明書には、EF-EOS Rを使えば「すべてのEFレンズ、EF-Sレンズ」が使えると書かれています。ところが同じキヤノンでも、APS-Cミラーレス用のEF-Mレンズは「使用できません」と明記されています。持ち越せるかどうかはメーカー名ではなく、どのマウントのレンズかで決まるわけです。 ニコンのマウントアダプター FTZ IIの主な仕様を読むと、線引きはさらに細かくなります。AFが使えるのはモーターを内蔵したAF-S・AF-P・AF-Iレンズです。AI AF Nikkor 50mm f/1.4Dのようにボディ側のモーターでピントを動かすAFレンズは、MFで使うことになります。AI-SなどのMFレンズは絞り優先とマニュアル露出で使えますが、AI改造をしていない古いレンズは、無理に付けるとアダプターやレンズが壊れるおそれがあるため使用できません。 手持ちのレンズがどれに当たるかは、レンズ名を見れば見当がつきます。キヤノンなら名前の頭がEFかEF-SかEF-Mか、ニコンならAF-S・AF-P・AF-Iの表記があるかどうかです。私は移行前に全部のレンズ名を棚卸し表に書き写し、対応表と1本ずつ突き合わせました。 純正アダプターでも、目減りする機能がある 「付けられる」ことと「全部の機能が使える」ことは、別の話です。キヤノンの高速連続撮影時に最高速度で撮影が可能なレンズの一覧では、RFレンズは1本を除いてすべて対応しています。それに対して、EF・EF-Sレンズは40本足らずしか載っていません。人気のEF70-200mm F2.8L IS USMの系統でも、載っているのはII型とIII型だけで、初代の名前はありません。 鉄道を撮る私にとって、連写の最高速が出ないのは小さくない差です。EF-EOS Rの使用説明書にも、アダプターに付けたレンズは最短撮影距離が長くなる場合があると書かれています。アダプターで持ち越したレンズは、資産としては残っても、性能の一部は目減りした状態で使うものと考えておくと、移行してからがっかりせずに済みます。新しいボディを選ぶ段階で、取扱説明書のレンズに関する項目と、こうした補足情報のページに目を通しておいてください。 メーカーをまたぐと、レンズは「売って組み替える資産」になる 純正のマウントアダプターは、キヤノンならEFレンズ用、ニコンならNIKKOR Fレンズ用と、どれも自社のレンズを前提に作られています。他社のレンズを電子接点ごと変換するアダプターも売られていますが、カメラメーカーの対応表には載らないので、AFや手ブレ補正がどこまで動くかはアダプターの作り手次第です。 例外は、複数のメーカーで同じマウントを共有している規格です。マイクロフォーサーズは、メーカーの枠を越えてボディとレンズを組み合わせられるオープン規格です。Lマウントも、ライカ・シグマ・パナソニックの3社が立ち上げた陣営で共有されています。この中での乗り換えなら、メーカーが変わってもレンズはそのまま使えます。 レンズメーカーの製品にも、持ち越しの道が残っています。シグマはレンズ用マウント交換サービスの案内でレンズを「撮影者にとっては大切な資産」と書き、対象のレンズに限って、有償でマウントを付け替える受付をしています。ただし一覧にないレンズは対象外で、交換費用は保証期間内でも有償です。一眼レフ用マウントへの交換受付をすでに終えたレンズもあり、受付の範囲は少しずつ変わっています。使うつもりなら、旧マウントのレンズを手放す前に一覧で確かめてください。 カメラメーカー純正のレンズでメーカーをまたぐなら、レンズはガラスのまま持ち越すものではありません。売却額という形に変えて、新しいマウントへ移す資産だと割り切ったほうが、判断はずっと早くなります。旧マウントのボディとレンズを手放す日が、そのまま資産の受け渡しの日になるわけです。 レンズ以外の機材は「規格」で残るかどうかが決まる マウント変更で見落としやすいのが、レンズ以外の機材です。こちらはマウントではなく、ネジやカードといった共通の規格に乗っているかどうかで、持ち越せるかが決まります。丸ごと持ち越せるのは、次のような機材です。 円形フィルター(マウントではなくレンズのフィルター径で決まる) 三脚と雲台(カメラを留めるネジの規格が共通) カメラバッグとストラップ SDカード 防湿庫やブロアーなどの手入れ道具 フィルターだけは、レンズを買い替えると径が変わることがあります。手持ちのフィルター径を控えておけば、新しいレンズでもステップアップリングで流用できるかがすぐ分かります。 反対に持ち越しにくいのは、ボディやメーカーと結びついた機材です。 機材同じメーカー内の乗り換えメーカーをまたぐ乗り換え縦位置グリップ、L字プレート基本的に機種ごとの専用品使えないストロボ新しい世代なら使える他社専用品は故障の原因になるバッテリー同じ系統なら使えるが、新機種で制限が付くことがある使えないメモリーカードカードスロットの規格次第カードスロットの規格次第 縦位置グリップとボディ専用のL字プレートは新しいボディに合わないので、私も旧ボディと一緒に送り出しました。ストロボについては、キヤノンのカメラの取扱説明書に、フィルム時代のTLやEZといった古いスピードライトは自動調光にすると常にフル発光になると書かれています。同じ説明書には、他社の特定カメラ専用のストロボを使うと故障の原因になるとも書かれています。 バッテリーは、同じメーカーの中でも油断できません。キヤノンのLP-E6系は、EOS 5D Mark IVのような一眼レフとEOS R5のようなミラーレスの両方で使える息の長いバッテリーです。それでもEOS R5 Mark IIの取扱説明書では、初代のLP-E6は電源として使えず、LP-E6NHとLP-E6Nも連続撮影速度が落ちる、Wi-Fiが使えないといった制限付きの扱いになっています。メモリーカードも、一眼レフの上位機で使っていたコンパクトフラッシュが新しいボディに入るかどうか、仕様表のカードスロット欄で確かめてください。 旧マウントの機材は、新品が消えると値段の付き方が変わる 最後に、手元に残した旧マウントの機材の値打ちについてです。CIPAのデジタルカメラ総出荷統計によると、会員メーカーが日本向けに出荷した一眼レフは、2013年の約145万台から2025年には約1万4千台まで減りました。前年の2024年は約3万1千台だったので、1年で半分以下になった計算です。同じ2025年のミラーレスは約45万7千台なので、一眼レフはその30分の1ほどしかありません。 新品の一眼レフを買う人がここまで減ると、旧マウントのレンズを買うのは、中古のボディを使う人か、アダプターでミラーレスに付ける人が中心になります。そうなると、相場はレンズごとに分かれやすくなります。私が売買記録の中で、旧マウントのレンズの値持ちが変わりやすいと感じたのは次のような場面です。 新しいマウントで、同じ焦点距離の後継レンズが出たとき 純正アダプター経由だとAFや一部の機能が使えないとき メーカーの修理受付の終わりが見えてきたとき 逆に、アダプター経由でもAFや手ブレ補正がそのまま働くレンズには、買い手が残りやすい。相場は時期と状態で変わるので、売る前には直近の取引価格を必ず確かめてください。 修理の受け皿の期限は、レンズだけの話ではありません。EF-EOS Rの使用説明書を読み返すと、アダプター自体の修理対応期間も「製品の製造打切り後7年間」とありました。旧マウントのレンズを今のボディにつなぐ橋にも、寿命があるということです。 私は「いつか使う」と残した中望遠を2年使わないまま手放し、売却額は最初に売っていた場合より2割ほど下がりました。機材は使ってこそ資産、眠らせたら負債。持ち越したレンズは使い倒し、使わないと分かったレンズは、新品の供給と修理の受付が残っているうちに手放すのが、資産を目減りさせない一番確かな方法です。思い入れのある1本だけは、オールドレンズブームの現在。人気マウントと相場で紹介したような遊び方で残すのも、私は悪くないと思っています。 まとめ 「ボディは消耗品、レンズは資産」は正しいが、レンズの値打ちはマウントという土台に乗っている 同じメーカー内なら純正アダプターで大半を持ち越せるが、EF-Mのように使えないレンズや、AFや連写速度が目減りするレンズがある メーカーをまたぐと、共通規格のマウントやレンズメーカーのマウント交換を除き、レンズは売却額として移すことになる フィルター・三脚・バッグ・SDカードは丸ごと残り、縦位置グリップ・ストロボ・バッテリーは持ち越しにくい 旧マウントの新品が減るほど、アダプターで快適に使えるかどうかで値持ちが分かれやすい 防湿庫の扉を開けて、レンズ1本ごとに「新しいマウントで全部の機能が使えるか」を対応表で確かめてみてください。使えない機能が多いレンズから順に次のマウントへの元手に変えていけば、レンズ資産を目減りさせずに引き継げます。 機材整理・移行
機材整理・移行 一眼レフからミラーレスへ。移行のベストタイミングと機材整理術 Posted on 2026年8月17日2026年8月17日 防湿庫の扉を開けるたび、しばらくシャッターを切っていない一眼レフと目が合う。あの気まずさを知っている… Read More