センサーサイズ講座。フルサイズ・APS-C・マイクロフォーサーズの選び方 Posted on 2026年10月20日 By tropiooo 「やっぱりフルサイズじゃないと、いい写真は撮れないんですか?」。 カメラ選びの相談を受けると、たいてい最初にこの質問が来ます。 こんにちは、「カメラとレンズの防湿庫だより」管理人の光森です。撮影歴は20年を超え、週末の早朝は風景と鉄道を追いかけています。 答えは「撮るもの次第」で、フルサイズでなくてもいい写真は撮れます。ただ、センサーサイズ選びは画質だけの話では終わりません。交換レンズはセンサーサイズに合わせて揃えていくものなので、最初に選んだフォーマットが、数年後の防湿庫の中身をほぼ決めてしまうからです。 この記事では、3つのフォーマットの違いをメーカーの仕様表の数字で整理し、何を撮る人がどれを選ぶかを、私の失敗談も交えてまとめます。 目次1 フルサイズ・APS-C・マイクロフォーサーズを数字で比べる2 画質の差は「高感度」と「ボケ」に出る3 大きさ・重さ・値段と、望遠の得やすさ4 何を撮る人がどれを選ぶか5 最初の選択が防湿庫の中身を決める6 まとめ フルサイズ・APS-C・マイクロフォーサーズを数字で比べる センサーサイズは、レンズから入った光を受け止める撮像素子の大きさです。大きさが変わると、同じ焦点距離のレンズを付けても写る範囲(画角)が変わるので、フィルム時代の35mm判を基準に「何mm相当か」で言い表します。このときに掛ける数字が、いわゆる換算倍率です。 フォーマットセンサー寸法(仕様表の値)面積(フルサイズ比)換算倍率縦横比フルサイズ35.9×23.9mm(キヤノンは約36.0×24.0mm)11倍3:2APS-C(ニコン・ソニー・富士フイルム)23.3〜23.5×15.5〜15.7mm約0.42〜0.43約1.5倍3:2APS-C(キヤノン)約22.3×14.9mm約0.39約1.6倍3:2マイクロフォーサーズ17.3〜17.4×13.0mm約0.262倍4:3中判(富士フイルムGFX)43.8×32.9mm約1.7約0.8倍4:3 寸法はニコンZ6IIIやキヤノンEOS R6 Mark IIなど、各社の現行機の仕様表で確かめた値です。面積は35.9×23.9mmを1として、私が計算しました。 APS-Cは「キヤノンとそれ以外」で寸法が違う APS-Cと一口に言っても、メーカーによって大きさが少しずつ違います。ニコンZ50IIと富士フイルムX-T5は23.5×15.7mm、ソニーα6700は23.3×15.5mmで、換算倍率はどれも約1.5倍です。 キヤノンだけは一回り小さく、EOS R10の仕様表では約22.3×14.9mm、有効撮影画角は「レンズ表記焦点距離の約1.6倍に相当」と書かれています。100mmのレンズなら、キヤノンのAPS-Cでは160mm相当、ほかのメーカーでは150mm相当です。ネットの比較記事を読むときは、どちらの倍率で計算しているかを確かめてください。 マイクロフォーサーズは縦横比が4:3 マイクロフォーサーズは、OM SYSTEMとパナソニックが採用している共通規格です。OM-1 Mark IIの仕様表では撮像画面サイズが17.4×13.0mm、アスペクト比は4:3で、パナソニックのG9PROIIは17.3×13.0mmと表記されています。対角線がフルサイズのほぼ半分なので、換算倍率はちょうど2倍、面積は約4分の1です。 4:3は3:2より正方形に近く、同じ横幅なら上下が広く写ります。空や水面を大きく入れる風景では、この上下の余裕がそのまま構図の余裕になります。 中判の富士フイルムGFXも同じ4:3で、43.8×32.9mmとフルサイズの約1.7倍の面積があります。GF63mmが35mm判換算50mm相当とされているので、換算倍率は約0.8倍です。 画質の差は「高感度」と「ボケ」に出る 高感度は、面積の差がそのまま光の量の差になる センサーが大きいほど、同じ明るさで撮ったときに受け止める光の総量が増えるので、ISO感度を上げてもノイズが目立ちにくくなります。面積の比から計算すると、同じ世代のセンサーなら、フルサイズとAPS-Cの差は1段強、マイクロフォーサーズとはほぼ2段が目安です。フルサイズのISO 6400とマイクロフォーサーズのISO 1600が、同じくらいのノイズ感という見当になります。 ただし、これは理屈の上での差です。私の経験では、日中の屋外で撮った写真をA4でプリントして、フォーマットの違いを見分けるのは難しい。差がはっきり出るのは、星空、夜の街、照明の暗い室内、それに私が通う夜明け前の山のように、光が足りない場面です。 ボケと被写界深度は、風景では小さいセンサーが味方になる もう一つの違いがボケです。同じ画角・同じF値で撮ると、センサーが小さいほどピントが合って見える範囲(被写界深度)が深くなり、背景はぼけにくくなります。目安はF値に換算倍率を掛けることで、マイクロフォーサーズの25mm・F2は、画角はフルサイズの50mmと同じでも、ボケの量はフルサイズの50mm・F4に近くなります。 背景を大きくぼかしたい人物や花の撮影では、ここはフルサイズの強みです。逆に、手前の岩から奥の山並みまでピントを合わせたい風景や、編成全体をくっきり写したい鉄道写真では、小さいセンサーのほうが浅い絞りのまま深い被写界深度を得られます。ボケが欲しいのか、手前から奥までのピントが欲しいのか。これが、センサーサイズを選ぶ最初の分かれ道です。 大きさ・重さ・値段と、望遠の得やすさ 差が開くのはボディよりレンズ ボディの重さは、センサーサイズほど素直には変わりません。バッテリーとメモリーカード込みで比べると、ニコンのフルサイズ機Z6IIIが約760g、APS-C機のZ50IIが約550g、マイクロフォーサーズのOM-1 Mark IIは599gです。防塵防滴やグリップの作りで決まる部分が大きく、センサーが小さいから必ず軽いとは限りません。 差がはっきり開くのはレンズです。カメラ映像機器工業会(CIPA)の交換レンズの出荷統計で2025年の1本あたりの平均単価を見ると、35mm以上のフォーマット用が8.14万円、35mm未満用が2.18万円。約3.7倍の開きです。 同じCIPAの2025年の年間実績で、本体の出荷金額を台数で割ると、35mm以上の機種が1台約17.1万円、35mm未満が約6.6万円で、こちらは約2.6倍でした。どちらもメーカーの出荷金額なので店頭の値段とは違いますが、ボディよりレンズのほうが差が大きいことは読み取れます。レンズは1本では終わらないので、この差は揃える本数の分だけ積み上がっていきます。 望遠は小さいセンサーほど得やすい 換算倍率がいちばん効いてくるのが望遠です。800mm相当に届く望遠ズームで比べてみます。OM SYSTEMのM.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II(換算200-800mm相当)は1,125g(三脚座を除く)、キヤノンのフルサイズ用RF200-800mm F6.3-9 IS USMは約2,060gです。全長も約206mmと約314mmで、カメラバッグへの収まり方がまるで違います。 ただ、F値を換算すると、マイクロフォーサーズの400mm F6.3はフルサイズのF12.6相当になり、光を集める力ではキヤノンのF9が上回ります。軽さと引き換えに何を譲るのか、という比較です。 フルサイズ機でも、ニコン・キヤノン・ソニーの機種には、画面の中央をAPS-Cサイズで切り出して望遠を稼ぐ機能があります。ただしニコンZ6IIIの仕様表を見ると、DX(APS-C)で切り出したときの記録画素数は2440万画素から1060万画素に減ります。画角は1.5倍になっても、画素は半分以下になるわけです。 何を撮る人がどれを選ぶか CIPAの2025年の年間実績では、出荷されたレンズ交換式カメラ約700万台のうち、35mm以上のセンサーを積んだ機種は約254万台で36%でした。残りの6割強は、APS-Cやマイクロフォーサーズを含む、フルサイズより小さいセンサーの機種です。「フルサイズでなければ」と思い込む必要はありません。 撮りたいもの別に、向いているフォーマットを整理しました。 撮りたいもの向いているフォーマット決め手星空・夜景・暗い室内フルサイズ高感度でもノイズが少ない人物や花のボケフルサイズ同じF値で大きくぼける旅行・街歩き・家族の記録APS-Cボディとレンズの値段と軽さ野鳥・飛行機・スポーツマイクロフォーサーズ、APS-C換算倍率で望遠を得やすい登山を伴う山岳風景マイクロフォーサーズレンズまで含めた軽さと深い被写界深度大きく伸ばす風景作品フルサイズ、中判面積の余裕と階調 迷ったら、「いちばん撮りたい被写体が、光の足りない場面にいるかどうか」で決めてみてください。夜や室内が主戦場ならフルサイズ、日中の屋外が中心なら、APS-Cやマイクロフォーサーズで困ることはほとんどありません。 風景と鉄道を撮る私の選び方 私自身は、いまフルサイズを使っています。天気図を読んで朝焼けを狙う日は、夜明け前の薄暗い時間から撮り始めるので、高感度と階調の余裕がそのまま歩留まりに効くからです。 一方で、鉄道の望遠撮影になると、マイクロフォーサーズを使う撮影仲間の機材が羨ましくなります。遠くの鉄橋を渡る列車を800mm相当で切り取りたくても、そこまで届くズームをフルサイズで選ぶと2kg級になり、山の上の撮影地まで担いで登るのはなかなかの苦行です。私はAPS-Cサイズでの切り出しでしのいでいますが、画素が減るぶん、あとからトリミングする余地は小さくなります。 風景も望遠の鉄道も1つのシステムでこなすならフルサイズ、望遠や山歩きが中心ならマイクロフォーサーズやAPS-Cの軽さが大きな武器になります。 最初の選択が防湿庫の中身を決める センサーサイズ選びで、私がいちばん伝えたいのはここからです。ボディは数年で買い替えても、レンズはそのフォーマットに合わせて何本も揃えていき、10年単位で防湿庫に残ります。最初のフォーマット選びは、これから増えていくレンズの規格を決めることでもあるのです。 APS-C用レンズは、フルサイズに移ると主力から外れる ニコンZ・キヤノンRF・ソニーEは、同じマウントの中にAPS-C機とフルサイズ機があります。APS-C用のレンズもフルサイズ機に付けられますが、ニコンの説明書によると、DXレンズを付けると撮像範囲がDXに固定されます。先ほどのZ6IIIなら1060万画素で撮ることになり、キヤノンでもRF-Sレンズを付けると約1.6倍の画角に切り出されます。 反対に、同じマウントならフルサイズ用のレンズはAPS-C機でもそのまま使えます。将来フルサイズに移る可能性があるなら、いちばんよく使う焦点距離の1本だけでもフルサイズ用にしておくと、移行のときに防湿庫の中身を活かせます。もっとも、フルサイズ用のレンズは大きくて値段も高いので、APS-Cの身軽さを少し手放すことになります。 私もデジタル一眼レフを始めた頃はAPS-C機で、専用の広角ズームを買い足していきました。数年後にフルサイズへ移ったとき、その広角ズームは真っ先に出番を失い、しばらく防湿庫で寝かせてから手放しています。寝かせていた期間は、値段が下がるのを眺めていただけでした。フォーマットを替えると決めたら、旧フォーマット用のレンズは状態が良いうちに次の資金へ替えるのが鉄則です。 マウントごと替わる移行は、防湿庫の総入れ替えになる 富士フイルムのXマウントはAPS-Cのシステムで、中判のGFXはGマウントという別のマウントです。マイクロフォーサーズも、フルサイズに移るならマウントごと替えることになります。この場合は、レンズもアクセサリーもほぼすべてが入れ替えの対象です。 最初の1台を選ぶ前に、次の点を確かめておくと、あとで防湿庫の中身を無駄にせずに済みます。 3年後もそのフォーマットで撮っていそうか 同じマウントに、より大きなフォーマットの機種があるか 欲しいレンズが、そのフォーマット用に揃っているか 望遠と軽さ、ボケと高感度のどちらを優先するか 一眼レフからミラーレスへ移ったときの、残す・手放すの仕分け方は「一眼レフからミラーレスへ。移行のベストタイミングと機材整理術」で詳しく書いています。フォーマットを替えるときも、棚卸しの手順は同じです。 まとめ フルサイズは35.9×23.9mm前後で、APS-Cは換算約1.5倍、キヤノンだけ約22.3×14.9mm・約1.6倍 マイクロフォーサーズは17.3〜17.4×13.0mmで換算2倍、縦横比は4:3 高感度とボケはフルサイズ、望遠と軽さ、深い被写界深度は小さいセンサーが有利 値段の差はボディより交換レンズで大きく、2025年の平均単価は約3.7倍の開きがある APS-C用レンズはフルサイズ機では画素が半分以下になり、マウントが替われば防湿庫は総入れ替えになる フォーマットは、撮りたい写真と、これから揃えるレンズの両方を見て選んでください。もし手元に、いまのボディと合わないフォーマット用のレンズが眠っているなら、それは防湿庫の新陳代謝を待っている1本です。まずは防湿庫の扉を開けて、レンズの銘板や元箱で「どのフォーマット用か」を1本ずつ確かめてみてください。 機材選び・比較