スマホで十分?それでもカメラを持つ意味を考える Posted on 2026年11月5日 By tropiooo 「この前の旅行、結局スマホでしか撮らなかった」。「一眼、今年は何回持ち出したっけ」。 防湿庫の扉を閉めながら、そんなことを考えた経験は私にもあります。 こんにちは、「カメラとレンズの防湿庫だより」管理人の光森です。撮影歴は20年を超え、週末の早朝は風景か鉄道を撮りに出かけています。 その私でも、家族との旅行や近所の散歩には、カメラを置いてスマホだけで出かける日が増えました。だから「スマホで十分」という声を、頭ごなしに否定するつもりはありません。足りている場面のほうが、むしろ多いくらいです。 それでも私は、重いカメラバッグを担いで夜明け前の撮影地に立ち続けています。この記事では、スマホで足りる場面とカメラが要る場面を、統計と私の撮影現場の両方から整理し、カメラを持つ意味に私なりの答えを出してみます。最後に、「やっぱりスマホで十分だった」と感じた方に向けて、防湿庫で眠っているカメラの話もします。 目次1 スマホで十分な場面は、思っているより広い2 統計で見る「スマホに置き換わったカメラ」と「残ったカメラ」3 それでもカメラが要る場面。風景と鉄道の現場から4 私なりの答え。カメラは「撮りに行く理由」を作る道具5 スマホで十分だと感じたら、防湿庫の中を見直す6 まとめ スマホで十分な場面は、思っているより広い まず、スマホがどこまで来ているのかを確かめておきます。 総務省の令和7年通信利用動向調査では、スマートフォンを持つ世帯の割合が91.8%で、テレビの保有割合はスマホを下回っています。9割を超える家に、カメラ付きの端末が少なくとも1台はあるわけです。 中身も、もう「電話のおまけのカメラ」ではありません。2026年11月時点のiPhoneの上位モデルの1つ、iPhone 18 Proの仕様を見ると、背面には13mm相当の超広角、24mm相当のメイン、100mm相当の望遠が並び、光学品質の8倍ズームとして200mm相当(1,200万画素)まで寄れます。メインカメラはƒ/1.48、ƒ/1.8、ƒ/2.8、ƒ/4.0の4段階から絞りを選べる可変絞りで、ナイトモードやProRAWでのRAW撮影にも対応しています。 私自身、スマホで済ませている場面ははっきりしています。 旅行や家族の行事の記録 撮影地の下見で、立ち位置と方角をメモしておく写真 夜の街や食事など、手持ちでさっと撮りたい場面 撮ったその場で誰かに送りたい写真 下見の写真には位置情報を残せるので、翌朝の本番で暗いうちに現地へ入っても迷いません。日中の風景を24mm相当で撮る限り、SNSの小さな画面ではカメラの写真と並べても見分けがつかないことが多く、撮影仲間に当ててもらったら正解率は半々でした。 統計で見る「スマホに置き換わったカメラ」と「残ったカメラ」 では、カメラの側はどうなったのか。カメラ映像機器工業会(CIPA)のデジタルカメラの総出荷(タイプ別)で、長い推移を見てみます。 年レンズ一体型レンズ交換式合計交換式の割合2008年約1億1,007万台約969万台約1億1,976万台8.1%2010年約1億858万台約1,289万台約1億2,146万台10.6%2012年約7,798万台約2,016万台約9,814万台20.5%2025年約244万台約700万台約944万台74.2% デジタルカメラ全体の出荷は2010年の約1億2,146万台がピークで、2025年には約944万台と、およそ13分の1まで縮みました。落ち込みが激しいのはレンズ一体型、いわゆるコンパクトデジタルカメラで、2008年の約1億1,007万台から2025年の約244万台へと、約45分の1になっています。 一方のレンズ交換式は、2012年の約2,016万台がピークで、2025年は約700万台です。減ってはいますが、ピークの3分の1あまりを保っており、2018年には台数でレンズ一体型を上回りました。1台あたりの平均出荷単価も、2011年の約1.26万円から2025年には約9.33万円まで上がり、レンズ交換式に限ると約10.4万円です。ちなみにレンズ一体型も、2023年の約172万台を底に2025年は約244万台まで持ち直しました。理由までは統計から読み取れませんが、スマホとは別に専用のカメラを持ちたい人が、少しずつ戻ってきているのかもしれません。 この数字を、私はこう読んでいます。スマホが置き換えたのは「記録のためのカメラ」で、残ったのは「撮るための道具」としてのカメラです。記念写真のために1万円前後のコンパクトを買う人が減り、スマホでは撮れない写真のために10万円を超える機材を選ぶ人が、市場の中心になりました。 それでもカメラが要る場面。風景と鉄道の現場から ここからは、私の撮影現場の話です。先に、場面ごとの使い分けを表にまとめておきます。 場面スマホ(iPhone 18 Proの場合)カメラ日中の旅行や記録13〜100mm相当で足りる持ち出す手間のほうが大きい遠くの列車や山頂200mm相当から先はデジタルズーム300〜400mmの望遠で引き寄せられる走ってくる列車画面を見ながらの構えになるファインダーで追いながら連写できる冬の夜明け前電池は連絡と情報の命綱予備電池を入れ替えながら撮れる描写を変えたいレンズの組み合わせは固定オールドレンズまで付け替えられる スマホで撮ってみて「これは無理だ」と感じた場面を、4つに分けて書きます。 100mmの先を走る列車には、望遠が要る 鉄道撮影では、谷をはさんだ向こう側の鉄橋を渡る列車を、高台から狙うことがあります。こういう撮影地で私が使う焦点距離は、300mmから400mmあたりです。 iPhone 18 Proの望遠は100mm相当で、200mm相当では1,200万画素での撮影になり、その先は最大40倍までのデジタルズームの領域に入ります。試しに200mm相当で撮ってみたところ、編成は画面に収まったものの列車は小さく、先頭車の顔を大きく切り出そうとすると細部が崩れました。 風景でも同じことが起きます。遠くの稜線に朝日が当たる一瞬や、雲海から頭を出した山頂を切り取りたいとき、足りなくなるのはいつも望遠側です。目の前に広がる景色はスマホの得意分野で、遠くの一点を引き寄せるのはカメラと望遠レンズの仕事です。 ファインダーは、構図の四隅を詰める時間をくれる 列車は、決めた位置に先頭が来た瞬間にシャッターを切ります。カメラならファインダーをのぞいたまま、列車を追いかけて連写できます。スマホにもバーストモードの連写や、露出やズームを操作できるカメラコントロールのボタンがありますが、腕を伸ばして画面を見ながら時速100km近くで迫る列車を待つと、私の場合はどうしても構えが揺れます。 ファインダーの価値は、動体だけではありません。目に当てて構えると、顔と両手の3点でカメラを支えられ、周りの景色が視界から消えます。晴天の屋外で背面の画面が白っぽく見えにくいときも、ファインダーの中はその影響を受けにくいので、画面の四隅に電柱や架線柱が入り込んでいないかを落ち着いて確かめられます。 風景で日の出を待つ30分、ファインダーをのぞきながら1歩右へ寄り、三脚を5cm下げ、構図を詰めていく。私はこの時間が好きで、カメラを担いでいると言っていいくらいです。 冬の夜明け前は、ダイヤルと予備電池がものを言う 冬の撮影地では、手袋をしたままダイヤルを回せるかどうかで歩留まりが変わります。露出補正もシャッター速度も、カメラなら指先の感触だけで変えられるので、目をファインダーから離さずに済みます。 もう1つはバッテリーです。私は予備の電池を2本、上着の内ポケットで温めておき、減ったら入れ替えています。スマホの電池は、そうはいきません。 地図、列車の運行情報、家への連絡。撮影地でのスマホは命綱なので、撮影のために電池を使い切るわけにはいかないのです。撮影はカメラ、連絡と情報はスマホと役割を分けておくと、夜明け前の山の中でも落ち着いていられます。 レンズを替えれば、同じ景色が別の絵になる 最後はレンズ交換です。スマホのレンズは、iPhone 18 Proなら13mmから100mm相当までの3つの組み合わせが、買った時点で決まっています。 カメラなら、同じ景色に400mmの望遠を向けることも、防湿庫の上段にいるヘリオスを付けて、ぐるぐると渦を巻くボケで撮ることもできます。フィルム時代の50mmをミラーレスに付けて遊べるのも、レンズを交換できるカメラだからです。 私なりの答え。カメラは「撮りに行く理由」を作る道具 では、カメラを持つ意味は何なのか。私の答えは、カメラは「撮りに行く理由」を作ってくれる道具だ、というものです。 スマホはいつもポケットにあるので、写真を撮れる状態はいつでも手に入ります。ただ、スマホがあるからといって、日曜の朝4時に起きて天気図を読み、始発前の撮影地へ車を走らせる人はほとんどいません。私をそこまで動かしているのは、防湿庫から出したカメラとレンズの重さです。 重くて、準備に手間がかかって、持ち出すには少し覚悟がいる。その手間があるから、撮る前に光や構図を考える時間が生まれ、1枚にかける気持ちが変わります。 逆の経験もしています。荷物を軽くしたくてスマホだけで紅葉の渓谷へ行った日、気づけば車を停めた場所から見える範囲をざっと撮っただけで、朝いちばんの光を待とうとはしませんでした。帰ってから見返すと、きれいに写ってはいるのに、どの写真にも自分で選んだ瞬間がありません。 画質の差は、これからも縮んでいくはずです。それでも、撮影に出かける行為そのものを楽しみたい人にとって、カメラはスマホでは代わりのきかない道具です。 ただし、この答えには条件が1つあります。カメラが意味を持つのは、実際に持ち出しているあいだだけです。 スマホで十分だと感じたら、防湿庫の中を見直す ここまで読んで、「自分はやっぱりスマホで十分だ」と感じた方もいると思います。それも正しい答えです。撮りたい写真がスマホで撮れているなら、カメラにこだわる理由はありません。 そのときに考えてほしいのが、防湿庫やカメラバッグで眠っているカメラのことです。機材は使ってこそ資産、眠らせたら負債。使わないカメラは、湿気とカビのリスクを抱えたまま、年を追うごとに型落ちしていきます。 私は2024年、2年寝かせた標準ズームを手放したとき、後玉に小さなカビが見つかって、事前査定より2万6千円低い額で売ることになりました。「いつか使う」と残した中望遠も2年間一度も使わずに手放し、売却額は最初に売っていた場合より2割ほど下がっていました。どちらも、使わないと決めた時点で動いていれば避けられた損です。 手放すかどうか迷ったら、次の問いに答えてみてください。 この1年で、そのカメラを一度でも持ち出したか 次に撮りたい被写体と撮影地が、具体的に決まっているか スマホでは撮れなかった写真を、最近1枚でも思い出せるか 1年後も、今と同じ状態で保管し続けられるか 「いいえ」が3つ以上並んだら、そのカメラは役目を終えかけています。持っている機材を一覧にして使用回数を書き出す手順は、一眼レフからミラーレスへ。移行のベストタイミングと機材整理術で紹介しています。 手放すと決めたら、カビやクモリが出る前に、状態が良いうちに動いてください。戻ってきたお金を次のレンズに回すのも、まったく別の趣味に使うのも自由です。 反対に、年に数回でもカメラを持って出かけたくなる日があるなら、その1台は手元に残す価値があります。私がフィルム時代の50mmを「思い入れ枠」として残しているのも、同じ理屈です。 まとめ スマホとカメラの関係を、統計と撮影現場の両方から考えてきました。 スマホのある世帯は91.8%で、iPhone 18 Proは13mmから100mm相当、光学品質で200mm相当まで撮れる。日常の記録ならスマホで足りる CIPAの統計では、コンパクトカメラの出荷はピークの約45分の1に減り、2025年はレンズ交換式が出荷台数の74.2%を占めた 300〜400mmの望遠、動体、ファインダーで構図を詰める時間、冬の操作性と予備電池、レンズ交換は、今もカメラの領分 カメラを持つ意味は「撮りに行く理由」を作ることで、持ち出してこそ成り立つ スマホで十分だと感じたなら、眠っているカメラを状態が良いうちに手放すのも筋の通った判断 まずは防湿庫の扉を開けて、この1年で一度も持ち出さなかったカメラを数えてみてください。その1台をどうするか決めることが、カメラを持つ意味に自分なりの答えを出すことにつながります。 撮影ライフ