カメラの買取査定はここを見られる。センサー・シャッター回数・カビ Posted on 2026年9月10日2026年9月10日 By tropiooo 「外観はきれいだから、それなりの値段はつくだろう」。 査定に出す前の私も、長いことそう思っていました。 こんにちは、「カメラとレンズの防湿庫だより」管理人の光森です。撮影歴は20年を超え、ボディとレンズを合わせて数十本を売り買いし、その査定額を全部エクセルに残してあります。 記録を並べて眺めていると、金額を大きく動かしていたのは外装のスレではないと分かります。査定士が真っ先に見ているのは、光がセンサーに届くまでの道筋です。レンズのガラス、鏡筒の内側、そしてセンサーの表面。ここに曇りや異物があると、外観がどれだけ美しくても金額は静かに落ちていきます。 この記事では、査定で見られる場所を、シャッター回数の調べ方、センサーとレンズの見分け方、査定前にやるべきこととやらないほうがいいことに分けて整理します。私が2万6千円を取りこぼした失敗談も、隠さずに書きます。 目次1 査定士が最初に見るのは、外観ではなく光学系2 シャッター回数の調べ方は、メーカーごとにまるで違う3 センサーのゴミとカビは、減額幅がまるで違う4 レンズはカビ・クモリ・バルサム切れの順に重い5 付属品と動作確認は、努力がそのまま金額になる6 査定前にやること、やらないほうがいいこと7 まとめ 査定士が最初に見るのは、外観ではなく光学系 中古機材の値付けは「次の持ち主が気持ちよく撮れるか」の一点で決まるので、査定は写りに直結する場所から順に見ていきます。 店頭で何度も観察しましたが、査定士はまずレンズを外し、マウント側からライトを当てて鏡筒の中を覗きます。次にセンサー面。外装のスレやグリップのベタつきを見るのは、そのあとです。この順番がそのまま、減額のインパクトの順番になっています。写りに影響しない小傷は数千円の話ですが、光学系の異常は数万円、状態によっては買取不可の判断につながります。 見られる箇所と、自分で手を加えられるかどうかを整理すると次のようになります。 査定で見る箇所主なチェック内容自分で対処できるかレンズ内部カビ、クモリ、チリ、バルサム切れできない(分解清掃はプロの領域)センサー表面ゴミ、拭きキズ、カビゴミの一部のみ(ブロアーまで)シャッター総レリーズ回数、動作音、幕の傷回数を把握するだけ外装・可動部スレ、ベタつき、ダイヤルやリングの感触清掃程度なら可能付属品・元箱フード、キャップ、充電器、保証書、取説完全にできる 表の下に行くほど、自分の努力が金額に反映されます。逆に上の2つは、状態が決まってからでは手遅れです。売ると決めてから動くまでの日数が短いほど有利なのは、この構造のためです。 シャッター回数の調べ方は、メーカーごとにまるで違う シャッター回数、いわゆるショット数は、ボディの使用履歴を示す唯一の客観的な数字です。ところが、そこにたどり着く方法はメーカーによって驚くほど違います。 ニコンとペンタックスは、撮った写真1枚から読み取れる ニコンとペンタックスのボディは、撮影した画像ファイルの中に累計レリーズ回数を書き込んでいます。店に持ち込む必要はなく、その場でJPEGを1枚撮って対応ソフトに読ませるだけで分かります。 定番はmacOSとiOS向けの「ShutterCount」というアプリです。開発元Dire Studioの公式ページを見ると、2026年9月時点でニコンが72機種、ペンタックスが30機種に対応しています。価格はMac版・iPhone/iPad版がそれぞれ9.99ドル。写真をアップロードして判定する無料のWebサービスもありますが、あれは撮影データを外部サーバーに渡す行為です。私は手元で完結するアプリを使っています。 キヤノンは画像に残らない。本体から直接読み出す キヤノンのEOSは事情がまったく違います。撮影データにレリーズ回数が書き込まれないので、写真を何枚眺めても数字は出てきません。「ショット数が分からないカメラ」だと思い込んでいる方が多いのは、これが理由です。 正解は、カメラをUSBかWi-Fiでパソコンやスマホにつなぎ、本体から直接読み出すことです。先ほどのShutterCountはこの方式でEOSに対応していて、対応機種は110機種と3社の中でもっとも多くなっています。一眼レフだけでなくミラーレスのRシリーズも一部が対象で、中古で買ったEOSの素性を確かめたいときにも同じ手が使えます。 ソニーと富士フイルムは、機種によって前提が変わる ソニーのαは厄介です。ShutterCountは非対応で、Web上の解析サービスもRAWでは読めずJPEGだけ、しかも新しい世代のボディには対応していないという状況が続いています。αを売買するときは、シャッター回数を根拠にした交渉がそもそも成立しにくい。代わりに、連写時の詰まりや動作音のムラといった実動作と購入時期が判断材料になります。 富士フイルムは世代で扱いが変わりました。X100Tのように本体のセットアップメニューに「シャッター回数」を持つ機種があった一方、X-T5のメニューにはその項目自体が存在せず、代わりに「バッテリー劣化度」が並んでいます。しかも富士の回数表示は、シャッターボタンを押した以外に、電源のオンオフや再生モードへの切り換えでもカウントが進む仕様です。他社の数字と単純に比べても意味がない、という点は覚えておいてください。 メーカー公表の耐久回数は、保証値ではなく試験結果 「10万回が寿命」といった言い方をよく見かけますが、あの数字の正体を確認しておきましょう。 ニコンはD850の製品特長ページで、シャッターユニットが「カメラに実装された状態で20万回におよぶテストをクリアー」したと明記しています。これは試験をクリアしたという事実であって、20万回まで壊れないという保証ではありません。一方、キヤノンのEOS R5 Mark IIの公式仕様表には、シャッター耐久回数という項目そのものがない。メカシャッターを持たないニコンZ9やZ8のような機種も出てきて、耐久回数という指標の位置づけ自体が変わりつつあります。 査定の現場でも、回数は絶対値というより使い方の履歴として読まれます。3年で15万回の個体と、10年で3万回の個体では、後者のほうがゴム部品の劣化や内部のカビを疑われることすらある。数字は判断材料の1つにすぎません。 センサーのゴミとカビは、減額幅がまるで違う センサーの汚れと聞くと身構えますが、査定への影響は原因で大きく変わります。 ゴミは、思っているほど減額されない 絞りを絞ったときに写る黒い点。あれの多くはセンサー前面のローパスフィルターに乗ったホコリで、清掃すれば取れます。査定側も清掃前提で見ているので、ゴミそのもので大きく引かれることは多くありません。 自分でやっていい範囲は、ブロアーで吹き飛ばすこととカメラ内のクリーニング機能を回すことまでです。それで取れないものはメーカーに任せます。キヤノンのあんしんメンテ スタンダードは「ご自身では手の届きにくい細かな場所やCMOSセンサーのゴミなどを清掃します」と明記していて、動作点検やファームウェア更新まで含みます。対象はレンズ交換式デジタルカメラと交換レンズ1本、2本目以降のレンズは1本につき2,200円(税込)。ただし修理対応期間が終了した製品は対象外なので、古いボディは先に対応期間を確認しておきましょう。 拭きキズとカビは、もう戻せない 問題はこちらです。査定前日に慌ててクリーニングスワブを買ってきて、センサーを自分で拭く。これが一番やってはいけないことだと私は思っています。 ローパスフィルターの表面は、力の加減を間違えれば簡単に筋状のキズが入ります。ゴミは清掃で消えますが、拭きキズは消えません。つまり、数千円の減額で済んだはずのものを、数万円の減額に自分で書き換えてしまうわけです。私も一度だけ試して、幸い無事でしたが、あのときの手の震えは忘れられません。 センサー前面のカビも分解が必要な領域で、こうなると査定額ではなく修理費と天秤にかける話になります。 レンズはカビ・クモリ・バルサム切れの順に重い レンズの査定は、外観ではなくガラスの中身で決まります。中身の異常には、症状ごとにはっきりした重さの差があります。 自宅でできる見分け方 用意するのは小型のLEDライトだけです。絞りを開放にして後玉側からライトを入れ、前玉側から斜めに覗き込んでください。白い壁や空に透かすのも有効です。 カビ 白い糸状・網目状・放射状の模様。中心から枝を伸ばすように広がる クモリ 全体または一部がぼんやり白く濁る。バルサム切れや経年のガス化が原因 チリ 小さな点状の異物。数個なら写りにほぼ影響せず、査定でも軽微 バルサム切れ 斜めから見ると虹色や気泡のような剥離跡が見える。貼り合わせ面の接着剤が剥がれた状態 判断に迷ったら拭いてみてください。取れるなら、それは前玉の汚れでカビではありません。 カビの怖さは、放っておくと進行することです。キヤノンの公式解説「湿気からレンズを守る3つの鉄則」によれば、カビの発生には温度5〜35℃前後と、レンズ表面のホコリという栄養、そして水分が揃う必要があります。日本の住環境は、この条件をほぼ一年中満たしている。同じ解説では、内部に根を張ったカビは分解清掃かレンズ交換が必要だと明言されています。放置して消えることはありません。 チリは軽微、カビとクモリは中から大、バルサム切れは修理そのものが難しく買取不可になることもある。おおむねこの順で重くなると考えておけば、査定の結果に驚かずに済みます。 私が2万6千円を取りこぼした話 2024年、防湿庫の奥で2年ほど寝かせていた標準ズームを手放しました。外観はほぼ無傷で、ネットの事前査定は5万8千円。ところが店頭でライトを当てられた瞬間、後玉の内側に直径1mmほどの白い点が見つかりました。カビです。最終提示額は3万2千円でした。 差額の2万6千円は、あの玉を2年間防湿庫に置くために払った家賃のようなものです。悔しいのは、使わないと決めた時点で売っていれば、そのお金が手元に残っていたということ。機材は使ってこそ資産、眠らせたら負債。自分のブログで何度も書いてきた言葉を、自分の財布で証明してしまいました。 付属品と動作確認は、努力がそのまま金額になる 元箱、フード、前後キャップ、ストラップ、純正の充電器とバッテリー、接続ケーブル、保証書、取扱説明書。これらが揃っているかどうかは、査定額にそのまま乗ります。特に純正バッテリーと充電器が欠けていると、買取店が仕入れ直すコスト分をそのまま引かれます。防湿庫の下段やクローゼットの箱を、査定前に一度ひっくり返してみてください。 動作確認も自分で回しておきましょう。私が見るのはこのあたりです。 全シャッタースピードでの動作と、低速時のミラーや幕の音 絞りの開閉、AFの合焦と迷い、手ブレ補正の作動音 各ダイヤル・ボタン・レバーの反応と、ズームリングやピントリングの重さ ホットシュー、カードスロット、各端子とカバーの状態 EVFと背面液晶のドット抜け、表示のムラ 不具合が見つかったら、隠さずに申告してください。黙って出しても、査定士は必ず見つけます。後から発覚すれば再査定や返送になり、時間も金額も余計に失う。先に伝えて「この症状込みでいくらか」を聞くほうが、話は早く進みます。 査定前にやること、やらないほうがいいこと 最後に、査定に出すまでの数日でやるべきことと、手を出さないほうがいいことを並べます。 やっておくこと。 ブロアーで大きなホコリを飛ばし、外装は乾いたマイクロファイバークロスで拭く メモリーカードを抜き取り、カメラ側でフォーマットしておく 著作権情報、ネットワーク設定、カスタム設定をリセットする 付属品と元箱を集めて、揃っていないものを把握する シャッター回数を自分で調べて、数字を先に知っておく 複数の買取店で見積もりを取り、金額の根拠を比べる やらないほうがいいこと。 レンズを自分で分解する 無水エタノールや除菌シートでコーティング面を拭く センサーの湿式清掃を練習なしで試す 外装のスレを塗料やタッチペンで隠す カビを漂白剤系の薬剤で処理しようとする 不具合を申告せずに出す やることより、やらないことのリストのほうが金額への効き方は大きい。触って直そうとした痕跡は、査定士にほぼ確実に見抜かれます。「隠そうとした個体」と判断されると、確認できていない箇所まで厳しめに見積もられる。きれいにするのではなく、正直に整えて出す。これが一番高く売れるやり方でした。 まとめ カメラの買取査定で見られるポイントを、光学系から順に整理してきました。 査定はレンズ内部とセンサーから見る。外装のスレは後回しで、減額幅も小さい シャッター回数はニコンとペンタックスなら写真1枚、キヤノンは本体をUSBかWi-Fiで接続して読み出す。ソニーは調べる手段が限られる メーカー公表の耐久回数は試験結果であって保証値ではない。査定では使い方の履歴として読まれる センサーのゴミは清掃前提でそれほど引かれないが、自分で拭いて付けたキズは戻らない レンズはチリより、カビ・クモリ・バルサム切れが重い。カビは待っている間も進行する 査定額は、待つほど下がります。シャッター回数は増えなくても、カビは防湿庫の中で静かに芽を出す。 自分の機材の状態を一度きちんと把握したら、あとはカメラを専門に扱う買取店に査定を依頼してみてください。どこを見られるか分かったうえで受ける査定は、金額の理由まで納得できます。防湿庫の新陳代謝、今週末あたりから始めてみませんか。 買取・査定のコツ