東南アジアのアリ類の起源と種分化パターンを解明 =マレー半島を起源地とした多様化と熱帯⾬林の固有種の保全=

細石助教による研究が,英国ロンドン・リンネ協会の国際学術誌「Zoological Journal of the Linnean Society」に 2023 年 6 ⽉ 14 ⽇(⽉)(⽇本時間)にオンライン掲載されました.
【概要】
東南アジア地域には多くのアリ類が⽣息していますが、いつ頃どの地域を起源地として多様化していったかはほとんど知られていません。どの地理的構造が種分化に寄与したのか、ある地域だけにみられる固有種がどのようなメカニズムで出現したのかは⽣物多様性の解明と保全に重要な情報となります。
細⽯助教らの研究グループは、東南アジアの熱帯⾬林にみられるフクラミシリアゲアリ種群の分⼦系統解析を⾏い、系統関係を明らかにしました。DNA 情報と化⽯情報を⽤いた解析から同種群が中新世の約 1200 万年前に出現し、⽣物地理学的解析からマレー半島周辺を起源地とし、陸地への分散や海の障壁による分断によって新たな種が分岐したことが⽰唆されました。クラ地峡やマカッサル海峡が種分化に重要な役割を果たしたと思われます。祖先的なグループは通常の胸部を有していて、その⼀部が膨らんだり刺状の突起が退化したりするなどの形態進化が起こったと考えられました。
熱帯アジア地域は多くの⽣物種が⽣息していますが、分類学的研究が遅れているために未だ発⾒されていない未記載種が数多く存在しています。今回の発⾒のように様々なグループで起源地となった地域が推定され、種分化様式が明らかになることによって、⽣物多様性の解明と保全に重要な具体的な地域が明らかになっていくと思われます。

研究詳細情報(九州大学プレスリリース)